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転倒・溺水・ヒートショックを防ぐ!介護施設の入浴介助で必要な安全対策

本人が負担を感じやすい入浴という場面で、いかに快適に過ごしていただけるかを考えると同時に、介助者側も腰や膝への負担を軽減しながら転倒などの事故を未然に防ぐには、しっかりとした準備と正しい手順が欠かせません。この記事では、入浴介助の現場で警戒すべき事故の事例を取り上げるとともに、実際にどのような点に注意して対応すれば良いのかを詳しく解説します。毎日のケアを安全かつ安心して行うために、ぜひ最後までご覧ください。

入浴介助における基本的な注意点

入浴前に利用者の健康状態を確認し、スタッフ同士で情報を共有する

入浴前には、利用者の体が入浴に耐えられる状態かどうかを判断するために、必ず体温や血圧を測定して異常がないかを確かめる必要があります。利用者本人から体調を聞くだけでなく、薬の副作用によって入浴が危険になることもあるため、あらかじめ薬の情報や既往歴も把握しておくことが大切です。仮に熱があったり血圧が安定しなかったりする場合は、無理に浴槽へ移動しないようにし、温めたタオルで体を拭くなどの代替策をとるのが望ましいです。スタッフ同士で利用者の状態を共有しておけば、誰が担当しても同じ判断ができるため、より安全なケアにつながります。必要に応じて医師の意見を仰ぐことで、取り返しのつかない事故を防ぐことができます。

移動時の安全対策を徹底し、思わぬ転倒を防ぐ

入浴介助では、利用者を浴室まで移動させたり、浴槽に出入りするときに大きな動作が伴うため、ふらつきやすく滑りやすい環境での転倒リスクが高まります。浴室の床が濡れている場合は特に注意が必要です。手すりが設置されている場所を有効に活用すると同時に、浴室や脱衣所が寒すぎると血圧の急激な変動を起こしてしまう恐れがあるため、ヒートショックを防ぐように室温を調整することも大切です。スタッフが近くで支えられる体制を整え、利用者の視点で考えて「どこでバランスを崩しやすいか」「どの場面で転びそうになるか」を先回りして把握するだけでも、事故の可能性をぐっと低くできます。

湯加減と水位を適切に保ち、高齢者の体に負担をかけない

高齢者は若い人よりも皮膚が薄く、温度の感覚が鈍くなっている場合があるため、スタッフが適温を確認したうえで利用者にも湯温を確かめてもらい、熱すぎたり冷たすぎたりしないかを丁寧に確かめることが欠かせません。一般的には38度から40度程度が勧められますが、個々の体調や好みによって適切な温度は変わるため、一律の基準にとらわれず都度見直す姿勢が大事です。湯量も多すぎると溺れるリスクが上がるので、浴槽の深さにも注意を払い、安全を重視して調整します。浴槽に浸かる前に足先など心臓から遠いところへかけ湯をして慣らすことで、急激な温度変化をやわらげることも有効です。

入浴中の変化を見逃さず、利用者の様子を絶えず観察する

利用者が浴槽に入ってからは、転倒や溺れだけでなく、のぼせや貧血、持病が原因の体調不良など、さまざまなアクシデントを想定しながら見守る必要があります。湿気がある環境下では発汗の具合がわかりにくいため、脱水や熱中症の初期症状を見逃さないようにすることも大切です。万が一、顔色が急に青ざめたり、返事がおぼつかなくなったりしたときはすぐに声をかけて様子を確かめ、必要であれば速やかに浴槽から上げるようにします。利用者自身が「少し気分が悪いかもしれない」と感じても、遠慮から言い出せない場合もあるため、スタッフは常に相手の微かな変化を見逃さない観察力が求められます。

入浴後は体をしっかり拭き取り、皮膚トラブルと転倒を防ぐ

浴槽から上がった直後は足元が濡れて滑りやすくなるため、できるだけ早くタオルで水分を拭き取り、足元の安定を確保することが大切です。高齢者の皮膚は摩擦や圧迫に弱いため、強くこするのではなく、押さえるように水気を吸い取っていきます。乾いたあとも皮膚の乾燥が進んでしまうことがあるため、必要に応じて保湿剤を塗ってケアをすることが望ましいです。入浴後は血圧が下がりやすくなるため、いきなり立ち上がらせず、一息ついて体を落ち着かせる時間をつくることも大切になります。特にめまいやふらつきが起きやすい利用者には、無理のないペースでゆっくりと衣服を着てもらい、事故につながらないように配慮することが必要です。

介助器具を活用し、利用者に合った方法で自立をサポートする

入浴は「立ち上がる」「またぐ」「姿勢を維持する」といった動作が多いため、車いすや歩行器だけでなく、手すりや滑りにくい素材の椅子など、多様な介護用器具を上手に活用すると安全性が向上します。必要に応じて座ったまま入浴ができる浴槽や、寝た状態で洗える機械式の設備を導入することで、スタッフの身体的な負担が減り、ヒューマンエラーのリスクも低減できます。利用者の状態に合った器具を選択することは、自力で動ける範囲を維持する上でも意味があり、日常生活動作(ADL)の低下を防ぐことにもつながります。器具を使う場合は、その使い方をわかりやすく説明しながら一緒に動作を確認し、なるべく本人に任せられる部分は任せる形で自立を促すことが大切です。そうした配慮を重ねることで、利用者も安心して入浴に臨むことができ、結果的に事故も未然に防ぎやすくなります。

入浴中に起こりやすい事故とリスク

転倒・転落

高齢になると筋力やバランス感覚が衰え、立ったり座ったりするだけでも不安定になりがちです。濡れた床や浴槽への出入り時には特に転びやすく、転倒してしまうと壁や床で体を強く打ちつける恐れがあります。若い人には想像しにくいかもしれませんが、石けんの成分が床に残っているだけでも足が滑りやすくなり、思わぬ怪我につながることがあります。入浴時は衣類も身に着けていないため、転んだ際に体を保護するものがない状態です。骨折などの大きな怪我を引き起こしてしまうと、そのまま寝たきりになる危険性も否めません。こうした事故を防ぐには、滑り止めマットや手すりを活用し、床や浴槽の高さにあらかじめ注意を払っておくとともに、利用者の体力や当日の体調を考慮して声かけを行いながら無理のないペースで誘導することが大切です。

ヒートショック

入浴前後の温度差によって血圧が急激に変動してしまう現象がヒートショックです。冬場の脱衣所は暖房が効いていないと室温が極端に下がりやすく、そこから熱い浴槽にいきなり入ると体が一気に温度差を受け止めなければなりません。これにより血圧が大きく乱れ、めまいや失神、場合によっては心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。12月から2月にかけて増加する傾向がありますが、実際には季節を問わず温度管理が適切でない施設や家庭であれば起こりうる事故です。対策としては、脱衣所や浴室を事前に温めておく、入浴中もこまめに声をかけて体調をうかがうなどの配慮が効果的です。極端に熱いお湯に浸かることは避け、利用者の方が急に立ち上がったときのふらつきや血圧変動にも目を配りながら、安全に入浴できる環境を整えることが重要になります。

溺水・誤嚥・意識障害

お湯の水位が浅いからといって溺れないわけではありません。体調不良や意識障害が突然起こると、前のめりになって湯船に顔を浸けてしまうことがあります。浴槽へ移動する際にバランスを崩して頭からお湯に突っ込むケースもあり、介助者がわずかの間でも目を離してしまうと事故につながりかねません。特に複数の利用者を同時に入浴させていると、一人ひとりを注視するのは難しくなりますが、それでも見守りを怠らない工夫が必要です。誤嚥に関しても、高齢者は飲み込む力が弱くなりがちで、うがいをしたときや口をすすいだときに湯を飲み込んでしまうことがあります。やけどや脱水症状といったトラブルも含め、浴槽の温度管理やシャワーの操作に細心の注意を払うことで、体に不調をきたす前に異変をキャッチして対処できるようにしておきたいところです。

介助者側の事故・身体的負担

入浴介助は利用者にとってのリスクだけでなく、介助する側にとっても大きな負担を伴います。高齢者を抱きかかえるように移動させる場面が多いため、腰痛や関節痛を引き起こしてしまうスタッフが少なくありません。床が湿っている浴室で無理な姿勢を取ると、介助者自身が転倒して利用者を巻き込む恐れもあります。こうした事故を避けるためには、機械式の入浴設備や手すり、適切な高さのイスなど、スタッフの負担を減らす補助器具を積極的に導入していくことが欠かせません。介助者の安全が守られてこそ、利用者の安全にもつながりますし、ケアの質を落とさずに済むというメリットも得られます。ハード面だけでなく、チームで連携して「どの利用者にどのような援助が必要か」を共有し、スタッフ同士で助け合える体制をつくることも重要です。

入浴事故を防ぐための設備

安全性を高める工夫

入浴介助の現場では、湿度や温度の影響で床が滑りやすくなることが多いため、まずは床素材を見直して滑りにくい加工を施すと、転倒のリスクを大きく減らすことができます。加えて、手すりを浴槽や壁の近くに設置しておくと、移動や立ち上がりの際にバランスを取りやすくなり、不安定な姿勢になりがちな高齢者を支える上で非常に役立ちます。

床との段差を少なくしておくことや、視野が狭くなりがちな方のために通路を広めに確保することなど、どのように安全を確保できるかを日常的に考えながら環境を整備していくと、事故発生率をかなり抑えられます。湿った床での石けんカスも意外と滑りやすさを助長するため、掃除をこまめに行い、常に清潔で快適な浴室環境を保つことが大切です。

利用者に合わせた浴槽を選択する

高齢になると、座位を保つのが難しかったり、車いすからの移乗が一人では困難だったりする場合があります。そうしたケースでは、傾斜が浅くてまたぎやすい浴槽や、座ったままで下半身を湯に浸けられるように設計された浴槽を導入すると安全性がぐっと高まります。入浴時の姿勢を保持するための補助器具があらかじめ備え付けられている製品もあり、介助者が必要以上に体を支えなくても利用者を安定させやすくなる点がメリットです。

また、車いす利用者向けに段差を徹底的に排除した設計や、浴槽の縁をまたがずにスライドして入れるタイプなども存在します。利用者の体力や身体の状態に合った設備を選ぶことで、入浴時の不安要素を取り除きながら、少しでも自分で動いてもらえる範囲を広げられるのもメリットといえます。

機械浴の導入による安全性と効率の両立

入浴介助は利用者だけでなく、介助者側にも腰痛などのリスクが伴う重労働ですが、機械浴を導入することで負担を軽減しやすくなります。リフトやストレッチャーを用いた機械浴では、利用者を安全に寝かせたまま浴槽に移動できるため、ヒューマンエラーによる転落や介助者の体勢不良による事故を抑制できる点が大きなメリットです。身体が拘縮していたり、バランスを取りづらい方でも安心して入浴を楽しんでもらえますし、スタッフの数が少ない場合でもスムーズに介助が行えるため、全体的な業務効率の向上にも寄与します。

設備投資はコストがかかる面もありますが、安全面でのメリットと、介助に携わるスタッフの負担軽減によって長期的には多くのメリットが期待できます。用者の尊厳を守りながら快適な入浴をサポートするうえでも、機械浴は有力な選択肢といえるでしょう。

まとめ

介護施設の入浴介助では転倒や溺水、ヒートショックといった事故が起こりやすく、利用者だけでなく介助者にも大きなリスクが潜んでいます。だからこそ、入浴前の健康チェックや温度管理、設備面の整備、スタッフ間の連携を徹底し、安心で快適な入浴環境を実現することが大切です。利用者の尊厳を守りながら事故ゼロを目指す取り組みを続けることで、真に安全な介護を築いていきましょう。最後まで気を抜かず、安全と快適さを両立させる工夫が欠かせません。

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